TECHNOLOGY技術紹介
「冷やす・あたためる」をキーテクノロジーに
自動車の快適環境の実現を目指します。
サンデンは、「冷やす」「あたためる」技術をコアに、カーエアコン用コンプレッサーやカーエアコンシステムを開発・製造してきました。そして、長年培ってきたコンプレッサー技術、システム技術とヒートポンプ技術の強みを活かし、効率的な「統合熱マネジメントシステム(ITMS)」の実現を目指して開発を進めています。
世界レベルの高い技術力をさまざまな製品へと展開させ、主要な自動車メーカーのお客様からの信頼に応え続けるとともに、さらなる省燃費、省エネルギー技術によって地球環境負荷の低減に貢献します。
統合熱マネジメント
システム
統合熱マネジメントシステム
(ITMS)とは
電気自動車(EV)はエンジンが無く、その廃熱が利用できず、暖房時に駆動用バッテリーの消費量が増加し、航続距離の低下につながることが課題となっていました。サンデンはEVの熱エネルギーを統合的に有効活用することにより、航続距離の延長と乗員の快適性に貢献する、統合熱マネジメントシステム(ITMS)の開発を進めています。
- EVの廃熱を回収して有効活用
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ITMS(Integrated Thermal Manegement System)は、特にEVの効率と性能向上を目指して開発された先進的な技術です。
サンデンのITMSは、モーター、インバーターなどパワートレインからの廃熱を回収し、ヒートポンプ技術と組み合わせることでEVの熱エネルギーを有効活用します。ITMSは、主要な車両コンポーネント(バッテリーやモーター、インバーター、車内空調)といった温度を一元的に管理し、より快適で効率的な運行をサポートします。
- バッテリーの負担軽減、航続距離の低下軽減
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ITMSにより、猛暑寒冷環境時においてもバッテリーの温度を適切に保つことで「バッテリーの負担を軽減します。
あわせて、快適な室内空間を効率よく提供できるため、電力の大量消費を抑えることによってバッテリーへの負担低減に貢献します。その結果、航続距離の低下を軽減することが可能になります。
業界をリードする
サンデンのITMS戦略
ITMSの展開は、高効率性、快適性、モジュール化、インテリジェンスの4つの方向性で進めています。現状、直接(ダイレクト)・間接(インダイレクト)方式の考え方でITMS2.0、ITMS3.0を展開しています。自動車のサイズや仕様により目的や用途に応じて、適切なソリューションを提供します。
最新の「ITMS 3.0」では、プロパンを冷媒に使用し、環境に優しい熱管理を実現しています。またサンデンは「インダイレクトシステム」を採用することで、冷媒がキャビン内に直接入らないよう工夫しています。これにより、乗員の安全性も確保されます。また、コンパクトリフリジェラントユニット(CRU)を採用し、冷媒使用量を大幅に削減。これにより、従来よりもシステムの小型化と軽量化が進み、電力消費を抑えつつも、高い熱管理性能を発揮します。
- ITMS2.0
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ITMS2.0はダイレクト方式と呼んでおり、冷媒を直接エアコンユニットに入れています。応答性が良く、早く冷やしたり温めたりすることが可能です。
- ITMS3.0
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ITMS3.0はインダイレクト方式で、水回路を介してエアコンユニットに入れています。環境規制のPFAS対応となるプロパンガスを冷媒とするシステムの場合、冷媒量を極力少なくすることができます。
- 基本コンセプト
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ヒートポンプシステム
サンデンの
ヒートポンプシステムとは
ヒートポンプは、外気の熱を利用し、冷媒の圧縮、液化、蒸発を繰り返すことで、省エネルギーで暖房する空調システムです。EVは、暖房時の熱源にエンジンの廃熱を利用できないため、エネルギー効率が高いヒートポンプを開発することで、駆動用バッテリーの消費量を抑え、電気自動車の航続距離の低下を軽減します。
サンデンでは、2017年からヒートポンプシステムの量産を開始し、2018年には中国の電気自動車市場において、中国量産車として初めて採用されました。(当社調べ)
- 省エネルギーで快適な室内環境を実現
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当社のヒートポンプシステムは、キーコンポーネントである電動コンプレッサー、熱交換器を採用した独自のシステム構成と制御技術を応用しています。ヒートポンプ専用のコントローラーを新たに開発し、省エネルギーで快適な室内環境を実現します。
- 暖・冷房のバランスに注力した独自のシステム構成
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- 極低温の暖房運転を考慮した効率と信頼性を両立させた電動コンプレッサー
- 暖房効率と排水性を冷暖房でバランス良く実現する縦流れ室外熱交換器
- 暖房効率と吹出温度分布の向上を両立するカウンターフロータイプの室内コンデンサー
- 空調と冷媒サイクルを最適に制御するヒートポンプ専用のコントローラー
SANDEN COLUMNヒートポンプシステムの
仕組み
ヒートポンプシステムは、空気中の熱エネルギーを効率的に活用して暖房を行うエネルギー節約技術です。このシステムは、冷媒の性質を利用し、少ない電力で多くの熱を生成することができます。
冷媒は圧縮されると高温に、膨張すると低温になる特性があり、これを活かして空気中の熱を取り込みます。
- ヒートポンプシステムの原理
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外気から熱を吸収する室外熱交換器、冷媒を圧縮して高温にするコンプレッサー、高温になった冷媒から室内に熱を放出するコンデンサーで構成されており、これらがパイプで繋がれ、冷媒が循環して熱エネルギーを室内に供給します。
- 熱源側熱交換器で、熱源から冷媒へ熱を移す
- コンプレッサーで昇圧(昇温)
- 利用側熱交換器で冷媒の熱を利用する
- 膨張弁で減圧し、熱源から吸熱できる温度へ下げる
この仕組みにより、例えば熱源が0℃の空気の場合でも冷媒温度をマイナス15℃程度にすることで、0℃の空気からでも熱を奪うことができます。
つまり、寒冷地でも電力消費を抑えつつ効果的に暖房を提供でき、電気自動車やハイブリッド車のバッテリー消費を最小限に抑え、航続距離の延長にも寄与します。