MESSAGE FROM SANDEN TECHNOLOGY技術メッセージ

04「世界ナンバーワン」実現へのロードマップ

サンデンの特徴的な技術はITMSにどう活かされていますか?
大河原:

他社も統合熱マネジメントシステムに取り組む中で、当社のITMSの優位性は、極低温時に補助的に使われる電気ヒーターの代替手段となる「ホットガスシステム」にあると思います。
従来のヒートポンプは、マイナス10℃以下の極寒環境では十分な性能を発揮できません。なぜなら、外気温が下がると空気中の熱エネルギーも乏しくなり、取り込める熱量が大幅に減少するからです。物理的にはマイナス20℃程度でも動作は可能ですが、空気中に熱エネルギーがほとんど残っておらず、暖房機能としては実質的に限界に達します。

このため、従来のヒートポンプでは補助電気ヒーターが必要でした。補助電気ヒーターは電力を使って直接暖房を行うため、極寒環境でも暖房機能を維持する役割を果たしています。しかし、補助電気ヒーターはコスト面や車両搭載スペースにおいてデメリットがあります。
サンデンの「ホットガスシステム」は、この補助電気ヒーターの代替手段です。コンプレッサーで生成した熱いガス(ホットガス)を直接暖房に利用するため、外気温に左右されにくく、安定した暖房性能を発揮します。従来の温水ヒーターに匹敵する出力(最大約8~10kW)を達成しており、極寒環境でも効率的に車内を暖めることが可能です。特にマイナス40℃といった極端な低温時でも、この「ホットガスシステム」により補助電気ヒーター無しで暖房が機能します。

寒冷地での安心感も高まりそうですね
大河原:

サンデンは、特に寒冷地における高効率で信頼性の高い暖房機能の提供を目指しています。「ホットガスシステム」は、通常よりも耐久性が求められますが、当社は長い歴史において高耐久コンプレッサーの開発、量産実績があり、そのノウハウを活用して高い次元の耐久性と信頼性を達成しています。
この「ホットガスシステム」は、補助電気ヒーターを非搭載できるため、車両全体のコストダウンにもつながり、設置スペースが不要になるため、車両設計の自由度も向上します。OEM(完成車メーカー)にとってコストとスペースの両面から魅力的な提案となると考えています。

他に、サンデンならではの技術を教えてください
大河原:

当社初の「積層熱交換器」を開発しました。この熱交換器は、冷媒と水(クーラント)の間で熱交換を行うもので、統合熱マネジメントシステムにおいて必要不可欠な要素です。他社では「チラー」と呼ばれる冷却水循環装置がすでに使用されているケースもありますが、当社としては初の製品化となります。中国市場向けに、すでに一部で量産化も進んでいます。
「ITMS3.0」として新たに開発している「積層熱交換器」は、単なる既存技術の模倣ではなく、新たなアプローチを採用している点が特徴です。具体的には、通常「高圧用」と「低圧用」で異なる設計が必要とされる冷却機器の分野において、当社は高圧用の設計をそのまま低圧用としても活用することで、一つの設計で双方の圧力条件に対応できるようにしています。従来では圧力に応じた個別設計が一般的であったため、この「ひとつの設計で両方をカバーする」というアプローチは業界内でも新しい試みであり、他社でもまだ実施されていない取り組みです。
このような設計を採用することで高圧用途では「凝縮器」として、低圧用途では「蒸発器」として動作します。この機能名は冷却プロセスの特性に合わせたものであり、設計段階から圧力の異なる環境にも対応できるように工夫されています。

ITMSの開発の動向、展望について教えてください
大河原:

サンデンの技術開発ロードマップとしては、今後も冷却・熱交換技術において革新的な製品開発を目指しています。特に、自然系冷媒を活用した製品ラインについて、2027年以降の市場投入を視野に入れています。そして本体のさらなるダウンサイジングを実現し、各部品の統合も進めていく予定です。

サンデンの強みはどのように発揮されていますか?
大河原:

サンデンが、このような技術革新を可能にしている背景には、当社の主力製品である「コンプレッサー」の高い技術力が挙げられます。サンデンはベルト駆動コンプレッサーの開発からスタートし、電動コンプレッサーの分野でもグローバル市場で高いシェアを誇り、中国市場ではトップシェアを獲得しています。コンプレッサーは、ヒートポンプや統合熱マネジメントシステムの効率や信頼性においては要となる技術です。サンデンのコンプレッサーは、冷却性能の高さと耐久性に優れており、業界内でも評価をいただいています。
サンデンには、コンデンサーやITMSなど専門部門との協力・連携により、技術的なシナジーを生み出せるという開発環境があります。「ITMS 2.0」や「ITMS3.0」の開発では、ヒートポンプの実績と経験を活かし、効率的で信頼性の高いシステムを構築できました。
サンデンは国内外で数少ないヒートポンプ製品を提供する企業の一つとして、競争力のある製品を展開しています。将来的には、統合熱マネジメントシステムの分野で世界ナンバーワンを目指し、グローバル市場におけるサンデンの地位をさらに強固なものにしていくことが目標です。

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