ITMSは、EVのモーター、バッテリー、インバーター系の廃熱を回収し、再利用するシステムの総称で、ヒートポンプの仕組みを利用し、冷媒を圧縮や膨張を繰り返すことで熱を移動させる仕組みをもっています。冷媒の温度が車外よりも低くなった場合は熱を吸収し、温度が上昇した場合は熱を放出します。
「ITMS2.0」は冷媒の入ったエアコンユニット(熱交換器)をダイレクト(直接)にキャビン(車室内)に取り入れ、冷媒が冷却または加熱に変化して冷房や暖房を作り出します。

一方、「ITMS3.0」で使用する冷媒はR290です。冷媒の熱交換器はダッシュボード内に配置させず、モータールームにインダイレクト(間接)に設置されており、そこで冷媒によって冷却・加熱された水(クーラント)が熱交換器に運ばれ冷暖房をつくり出します。この仕組みのため、R290冷媒がキャビン内で燃焼や爆発するリスクを抑えることができます。
サンデンの「ITMS3.0」の大きな特徴は、モータールームにエアコンユニットを設置するため、本体がとてもコンパクトであることです。サンデンでは、冷媒配管がなく本体に一体化させ、体積を小さくした冷媒ユニット(Compact Refrigerant-Unit:CRU)を開発しました。CRU内では冷媒から水へ熱を移動させ、水をEV全体に循環させて各部品の温度を制御・管理します。
熱の輸送手段を水にした理由は、PFAS冷媒規制への対応が背景にありますが、「R290」の使用量を抑える意味もあります。冷媒の使用量は現段階でも少量ですが、さらなる削減を目指して開発を進めています。